友美子へ

お元気ですか?

貴女と会えなくなってもう20年程の月日が流れました。

毎日忙しくしていますか?

充実した日々を過ごしていますか?

笑顔でいますか?

もう二度と逢えない事も、気持ちを伝える事も出来ないのはわかっているのに、自分の人生を振り返ると、どうしても友美子への想いが溢れて来てしまいます。

こんな自分の弱さも大嫌いだし、友美子への想いや後悔を考えてしまう気持ちも大嫌いです。

いくら後悔しても過去は変えられないのは、頭ではわかっていても心が壊れてしまいそうなので、今の素直な想いをここに書き記そうと思います。

振り返ると、酔って馬鹿な寝言を言ってしまったあの時から、友美子はいっぱい苦しんですれ違ってしまってたんだね。

俺はあの時どんな夢を見ていたのか?どのような寝言を言ったのか?俺には記憶が無いからわからないし、もう知る事も出来ないけど、その一言が貴女を深く傷つけ、不安にさせてしまった事が今でも悔やまれてなりません。

あの頃の俺は、友美子に浮気を疑われた時に最初は「えっ?急になんの話?」という思いだし、何回も言われる様になってくると「なんでそんな事言うの?」「どうしてわかってくれないの?」と自分の意見ばかり押し付けて貴女を責めてしまいました。

あれから歳を重ね思うのは、友美子の立場に立って考えると、そんな心無い寝言を言われたら友美子は不安だったよね、苦しかったよね、たくさん悩んで心が疲れてしまったよね。


それなのに俺はそんな友美子の気持ちをわかってあげられず、貴女に寄り添って不安を解消してあげれなかった。

直接会えた時も友美子は決して俺を責めなかった。本当は聞きたい事や言いたい事があったはずなのに、きっと友美子は優しいから我慢してたよね。


俺は一緒に居れる時間がただ嬉しくて、そこまで深刻に考えられませんでした。

友美子はどんな気持ちで俺と会ってくれていたのかな?

会えて嬉しかったのは俺だけだったのかな?

なんて思うと切なくなります。

上手く愛せなくてごめんね。幼かったと許して下さい。

でも、あの時の自分も一生懸命生きていたし、当時あのような対応しか出来なかった俺は、それが精一杯の自分の器だったという事でしかありません。

友美子の側に居たい一心で、会社に貴女の住む街への転勤を願い出て、やっと転勤が決まった時は嬉しかった事を覚えています。

これでずっと友美子の側に居れる。もう大丈夫だと思っていました。

でもまさか引っ越した日に会えたのが最後になるなんて、夢にも思っていませんでした。

友美子の不安や疑念はそこまで大きくなってしまってたんだね。

昼間に会った時にはわからなかったの。本当に俺は馬鹿で鈍感だよね。

あの日の夜の友美子からの電話で、心が折れてしまった自分の弱さを何度も後悔しました。

どうしてちゃんと会って話をしようと言えなかったのか?

どうしてもっと冷静に話せなかったのか?

どうして貴女の手を離してしまったのか?

友美子に嘘や隠し事なんて本当に無かったの。

浮気なんてしてなかった。

だから最後はもう何て言えばいいのか分からなくなっていました。

ただ信じて欲しかっただけなの。

友美子の居ない人生に絶望し、仕事を辞めて地元に帰ってからも、自分の気持ちにずっと整理がつかず、最後まで困らせてしまってごめんなさい。

貴女に想いは届か無くなってしまったけど

本当に友美子は俺の全てでした

心から愛していました

当時の俺は、ずっと一人で転勤を繰り返し、休みも少なく朝から夜まで働く飲食の仕事に疲れていました。

趣味などを持つ余裕も無く、予定の無い休みの日は夕方まで寝てしまう様な生活でした。

そんな生活が友美子と出会って変わったの。

どんなに辛くても友美子が居たから頑張れました。

電話で貴女の声を聞くだけで、次に会える日を想うだけで、毎日が楽しく生きる気力が湧いて来ました。

友美子の存在が俺を強く成長させてくれたの。

色々あったし、俺だって不安になる事もあったけど、友美子がこれまでに言ってくれた言葉や、とても嬉しい手紙をくれた貴女の事を、迷わず信じようと心に誓いました。

友美子との未来を夢見る時間は、俺の生きる希望でした。

人生に「もし」は無いけど、ちゃんと近くに居れたら、ちゃんと時間を作れていたなら、もっと沢山の楽しい思い出を貴女と一緒に作って行きたかった。

友美子の誕生日と俺の誕生日を、一緒にちゃんと10月23日に祝いたかった。

花火大会やクリスマス、初詣などもっと当たり前の事を貴女と過ごしたかった。

ずっと友美子の隣で笑っていたかった。

でも当時の俺には、とてもそんな時間も余裕もありませんでした。

そう思うと本当に何にもしてあげれなかったと心が痛みます。

でもね大変な仕事でしたが、お互いの地元でも無いあの場所で友美子と出逢えた事

一緒に仕事ができた事

緊張しながらご飯に誘った事

友美子に告白をした事

貴女と想い合えた事

それら全ての事は本当に奇跡で感謝しています。

今更幾ら想いを吐き出そうが、幾ら後悔しようが、俺は世界で一番大切な人を失った事実は変わりません。

たった一言の言葉で、有りもしない何かに怯え、互いに傷付き、二人の未来が消えて無くなってしまいました。

俺たち二人にはご縁が無かった。ただそれだけの事なんだよね。

あれから貴女も俺の知らない人生を歩み、きっと幸せに暮らしていると思います。

俺もこの20年、新しい環境で色々経験させてもらい、一生懸命生きて来ました。

だから過去を振り返りる事なんて意味が無いし、格好悪い事だとわかってるつもりです。

忙しい毎日の中で、友美子の事も思い出さなくなる日が来ると思いたかった。

でもそんなの無理でした。

忘れる事なんて出来なかった。

ただ、今はもうそれで良いと思っています。

それほど貴女の事を想える気持ちは、きっと素晴らしい事だと思うから。

でも残りの自分の人生は、過去に執着せず、他人と比べず、今を大切にして、自分らしく心穏やかに過ごして行きたいと願うばかりです。

最後にどうしても友美子に伝えたい事があります。

20年前に「ありがとう」も「さよなら」もちゃんと言えなかったから。

いつか貴女に届くと信じてここに書いておきます。

俺は友美子と出逢って、友美子に恋をして、友美子から愛されて、本当に幸せでした。

楽しかったことや嬉しかったこと辛かったこと、友美子からは大切な物を沢山もらいました。

考え過ぎちゃう所があって口下手な貴女だったけど、純粋でちょっと天然な感じが可愛くて、笑顔がとても素敵で、真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくれた友美子が大好きでした。

こんな俺を好きになってくれてありがとう。

側にいてくれてありがとう。

たくさん幸せをくれてありがとう。

たとえもう二度と逢えなくても、友美子と過ごした思い出は俺の大切な宝物です。

それでは身体には気を付けてね。

友美子の毎日が笑顔でありますように。

遠くから貴女の幸せを願っています。

本当にありがとう

さようなら

中西洋一

コメント